学習スタイルってどういうこと?

皆様、こんにちは。

東京都あきる野市にあります生活介護笑スリーの佐藤です。

最近はスライスしたトマトにゴルゴンゾーラピカンテチーズと生ハムを乗せ、クレイジーソルトとオリーブオイルをかけて食べることにハマっています。

オリーブを添えると最高です。ほぼ毎日食べてます。

手軽でめちゃめちゃ旨いので皆様是非試してみてください。

 

今回はTEACCH®における「学習スタイル」とはいったいなんなのかを簡単に解説してみたいと思います。

私自身、社内であったり社外であったりの研修や文献から学習スタイルの勉強をしているのですが、まだまだ理解が足りていないので、この場を借りてアウトプットをして自分自身の理解を深めることが目的であったりもします。

興味がある方はお付き合いください。

もしかしたら理解が追いついていない部分や解釈違いなところがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

「これはちょっとあんた違うんじゃないの?」とどうしても訴えたい方がいらっしゃれば笑スリーの佐藤宛にお電話ください。

学習スタイルってなんなのさ?

 

学習スタイルとはなんなのか、一見すると何を意味しているのかわかりにくい部分がありますよね。

私自身、SHIPに入社して初めてこの言葉を知りましたが、当初は「なにを言っているのか全くわからねぇ」という感じで軽いポルナレフ状態でした。

ポルナレフ状態とは「非常に混乱している状態」という意味です。週刊少年ジャンプ「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物”ジャン=ピエール・ポルナレフ”が理解不能な状態に陥った際の状況が由来です。

そんな当時の私と同じ感覚のあなたに学習スタイルという言葉の概念から解説していきます。

 

学習スタイルの概念

端的に言えば学習スタイルとは「自閉症スペクトラム障害の人たちの物事の捉え方や感じ方の特徴や傾向、認知のしかた」を整理したものです。

TEACCH®プログラムと銘打った取り組みがアメリカのノースカロライナ州で行われており、自閉症スペクトラム障害の人々への支援をガチで実践していくすごい人たちがいました。

そんなTEACCH®プログラムでは自閉症スペクトラム障害の支援には学習スタイルが重要であるとされています。

”TEACCH®とは、1960年代よりアメリカ・ノースカロライナ州で発展してきた自閉症の人たちのための生活支援制度で、 自閉症の人たちに彼らを取り巻く環境の意味を伝え、意味のあるコミュニケーションをしながら、彼らとの共存世界を目指そうとするプログラムです。 それは自閉症の特性理解に大きな礎を置くもので、今や世界中に知られ、また実際に応用されるところとなっています。”

近年ではこの考え方が世界に広がってきており、自閉症スペクトラム障害の支援において効果的な手法として注目をされています。

 

自閉症スペクトラム障害とそうでない人たちの違い

学習スタイルを理解するためには、まず自閉症スペクトラム障害とそうでない人たちの違いを理解する必要があります。

自閉症スペクトラム障害(以下ASDと表記します)の人たちは、そうでない人達(以下定型と表記します)とは脳のつくりに違いがあるとされています。

脳のつくりが違うことで、情報の処理の仕方が大きく異なります。

では、脳のつくりが違うことがどのような影響を与えるのでしょうか。

 

定型の人の中でも物の感じ方や考え方は皆さん異なります。

生まれ持った資質、生まれ育った土地、家族や友人との関係等によって様々な個性が出るものです。

なので、物の好き嫌い、嗜好、使用する言語、生活様式なんかは人それぞれです。

しかし、定型の人たちのこの違いというのは脳のつくりが違うことに原因があるからというわけではありません。

前述のように生まれ育った環境や生まれ持った性質等で左右されるものとされています。

 

カレーに例えると、一口にカレーと言っても色々なカレーがあります。

  • ビーフカレー
  • ポークカレー
  • チキンカレー
  • グリーンカレー
  • ドライカレー

等々。

味わいや辛さ、色、形状等の違いはあるものの「カレー」という枠から外れることはありません。

このカレーたちと同じように、同じ枠の中での差異が定型の人たちの違いにあたります。

 

一方で、ASDの人の場合は根元から違います。

物の感じ方、見え方がそもそも違ってくるようです。

カレーとパスタくらい違います。

 

脳のつくりが違うことで、このように根本からの違いがあるため、定型の人たちはASDの人たちのことを理解しにくいと感じるようです。

一般的に共感ができなければ理解がしにくいものなので、これは自然なことではあります。

 

ASDの人たちの得意・不得意

定型の人たちには誰であっても得意なこと・苦手なことがあります。

吉田松陰もそう言っているのでおそらく事実です。

ASDの人たちは得意なことと苦手なことがはっきりと分かれていることが多いです。

定型の人たちから理解が示されにくいASDの人たちは、総じて社会に順応できないわけではありません。

ASDの人であっても得意なことを活かして生活している方もいらっしゃいます。

 

ASDの人たちの中には「興味を持てることには没頭する」ことが得意な方がいます。

この能力は一つのことを追求することには適しています。

この能力を活かして研究者等の専門職になられ結果を出している方もいます。

この場合はASDの特徴を活かしている、強みになっていると言えます。

 

逆に「興味がないことへは関心が薄い」特徴もあります。

社会生活を送る上で「興味があること以外はやらない」となってしまうと、周囲との摩擦が生まれてしまうこともあるでしょう。

 

このように彼らは定型の人たちの物差しでは測れない、彼らなりの価値基準を持っており、それ故に一見理解できない行動を取ることがあります。

 

例えばこんなことがあったとします。

 

小学3年生のASDと診断をされているA君。

授業中に急に席を立ち、教室の外へ駆け出していきました。

どうでしょう。A君の行動を見てあなたはどう思いますか?

一見するとA君の行動は突飛であり、ちょっとよくわからない行動に思えます。

しかし、A君はA君なりに何かしらの理由があって駆け出していったのかもしれません。

  • 「周囲がザワザワしていて不快だった」
  • 「忘れものに気付いて取りに行った」
  • 「外に飛行機が飛んでるのを見に行った」

等々、想像するだけで色々な理由が考え付きます。

このようにASDの人たちの行動の理由を想像する、考える時にはこのような視点を持つことはとても重要なことですが、難しいことでもあります。

何故なら印象強い、インパクトがある行動に対しては行動の理由よりも、行動そのものに目が行きがちになってしまうからです。

そして、その行動を直す、注意する等の発想になり繋がりやすいです。

しかし、ASDの人たちには定型のルールや常識を伝えても、受け入れる・理解することが難しい場合があります。

そのため、ASDの人たちが理解しやすいように、行動しやすいように工夫をしていく必要があります。

このための方法を考える上で重要なのが、「行動の結果へのアプローチ」ではなく「行動の理由を推測してアプローチしていく」視点です。

行動の理由を推測していくためには「彼らがどのように見えてどのように感じているのか」への理解を深めることが必要とされています。

 

学習スタイルの解説

長くなりましたが前提のお話はこのあたりにして本題に入って行きます。

これまでのお話を整理するとこのようになります。

  • 定型とASDでは物事の捉え方に大きな隔たりがある
  • 定型の人たちはASDの人たちの物事の捉え方を理解しにくい
  • ASDの人たちへの支援にはASDの人たちへの理解が重要
  • ASDの人たちには得意、不得意がある

これらを踏まえた上で学習スタイルの概要を説明していきます。

学習スタイルの一覧表は下記のようになります。

パッと見てなんのことだかチンプンカンプンな方もいらっしゃるかと思います。

上から順にかいつまみながら1つずつ解説していきます。


苦手:暗黙的学習 / 明示的学習

暗黙的学習とは、明確に説明をされていないがその場で求められている行動を理解できる能力です。

空気を読む、顔色を窺う、周りの動きに合わせる等というと想像しやすいでしょうか。

更には抽象的な表現は理解がしにくいと言われています。

例えば「ちゃんとしなさい」と言われても、ちゃんとするとはその時に何をどのようにすることを求められているのかが曖昧なので、自閉症の人たちは理解がしにくいです。

ASDの人たちはこういった暗黙的な学習が苦手とされています。

 

こういった苦手な部分を補うには、明示的に伝えることが有効とされています。

明示的とは、具体的に説明がされているということです。

信号機の青が歩ける・赤が止まれ、駅のホームでは次の電車が何時に来るのか電光掲示板に表示されている等は明示的になっていると言えます。

ASDの人たちに対しては様々な場面で明示的な示され方をされると、その場に応じた行動をとりやすいです。

 


苦手:聴覚情報処理 / 強み:視覚的情報処理

ASDの人たちは耳から入る情報を処理することが苦手とされています。

定型の人たちは普段、話し言葉でコミュニケーションを取ることが多く、そこに不便を感じることはあまりないかと思います。

静かな場所であることにこしたことはありませんが、多少周りが騒がしくても会話に支障は生じないですね。

ASDの人の中には周囲の雑音と話している人の声が混ざり合ってしまって上手く聞き取れなかったり、聞こえてはいても聞いた言葉を理解するまでに少し時間がかかることがあります。

また、ASDの人は聞いた言葉を頭の中で絵やイラストに変換して理解する人もいるようです。

その為、絵やイラストにはできない事柄の理解は難しい場合があります。

一方で視覚的情報処理は得意な方が多いです。

話し言葉では伝わらなくても文章にすれば問題なくやり取りできたり、写真や図等で示せば理解がしやすくなります。

前述のように頭の中で絵やイラストを思い浮かべる人には、その手間を省く分処理速度も上昇します。

中には一度見たものは写真のように精密に記憶できる卓越した能力を持っている方もいらっしゃいます。

 


苦手:全体の注意 / 強み:細部への注意

ASDの人たちは物事の全体を捉えることが苦手とされています。

よく中枢性統合の困難さなんて表現がされます。

要するに木を見て森を見られないような感じです。

一方で細部への注意は得意です。

私が見たご利用者様で輪ゴムが好きな方がいらっしゃいました。

その方は草むらなどの一見して気付かないようなところに輪ゴムが落ちていても、瞬時に輪ゴムが落ちていることに気付き拾うことがありました。

このように、定型では見落としてしまうようなことにも気づくことができる能力があります。

支援においては、見てほしいところに色や印を付けることで、苦手な部分をフォローできます。

 


苦手:実行機能 / 強み:限定的な興味

ASDは実行機能の弱さがあります。

実行機能とは

  • 段取りをつける
  • 計画立てる
  • 優先順位をつける
  • やらなければいけないことをやる

等の能力のことです。

ASDの人はこういった部分に困難さを抱えています。

例えば料理をするときには「どの材料を用意してどういう順番で調理をしていくか」という段取りが上手くできないことがあります。

一方で限定的な興味は強みとなります。

限定的な興味とは色々な意味合いがありますが、例えばASDの人は「いつも同じ物が同じ場所にある」「いつも同じ順番で行動する」等のルーティンを好む傾向にあります。

その強みを活かして「この料理をするときにはいつも決まった材料、決まった手順で調理をする」と決められていると苦手な部分をフォローできます。

 


苦手:社会的認知 心の理論

最後は社会的認知、心の理論についてです。

ASDの人は社会的認知の弱さがあり、共同注意や他者の感情に反応することが苦手です。

共同注意とは人と同じ物に注目する、注意を向けるという意味です。

共同注意は人と感情や感覚を共有することに役立つ能力ですが、ASDの人たちはこの能力に困難さを抱えているため、他人の感覚や感情に気付きにくいです。

 

次に心の理論とは「相手の立場に立って物事を考える」こと、つまり他者の視点を想像する能力のことです。

ASDの人は客観的に物ごとを捉えることが非常に苦手で、何事も主観的に捉える傾向があります。

そのため

「一方的に話したいことを話してしまう」

「相手が嫌がっていることを分からず嫌なことをしてしまう」

などの行動をとってしまうことがあります。

これらが相まって、悪気はなくても人との関わりが上手にできない場合があります。

 

こういった傾向に対してはソーシャルナラティブを活用することが効果的である場合があります。

ソーシャルナラティブとは、短い文章や絵、イラスト等で状況を本人視点で説明をし適切な行動を伝える手段です。

下の例文を見ていただけると分かりやすいかと思います。

引用:知的障害のある自閉症スペクトラムの人に対する
ソーシャルナラティブを用いた実践 より

これはAさんに対して、自分視点で自分の行動や状況、人とのやり取りの方法を伝えるために作成されたものです。

ソーシャルナラティブではこういった本人の理解しやすい形で、その場に応じた適切な行動を伝えていきます。

 


大まかな説明となりますが、学習スタイルの項目ごとの解説は以上となります。

 

学習スタイルを活かしていこう

いかがでしたでしょうか。

ご利用者様の支援を考えていくうえで、まずはご利用者様への理解を深めることが重要です。

ご利用者様を理解できていなければ、その方に合った支援方法は考えようがないですよね。

学習スタイルに基づき、ご利用者様を観察していくことが誤解なく精度が高い理解に役立つと考えられています。

そして、学習スタイルはあくまで指標であり、ASDの人たちはASDである前に一人の人間ですので、お一人おひとりで違いがあります。

なので、学習スタイルを参考にしながら個別に「この人はどういう人なのか」を考えていくことを念頭に置く必要があります。

私自身、まだまだ知識・経験共に未熟ですが、ご利用者様に適切な支援の実践ができるように日々研鑽していきたいと思っています。

アインシュタインも「6歳のこどもに説明できなければ理解しているとはいえない」と言っていました。

ちなみにアインシュタインはこの舌を出したお茶目な写真が有名ですが、記者に囲まれて道を開けるように要求するも食い下がって笑顔を求められた際、抵抗心から舌を出して見せたそうです。

到底敵わないですがアインシュタインに倣って、小さな子どもが理解できるくらい知識を深めていきたいと思います。

現場からは以上です。