自閉症の方への余暇支援について考える
皆様、こんにちは。
あきる野市にあります生活介護笑スリーの佐藤です。
今回は余暇をテーマとしてお話をいたします。
とある研修で自閉症の方に対して余暇活動をどのように支援をしていくかといったテーマで解説がされていたので共有してみたいと思います。
皆様、趣味はお持ちでしょうか?
私はゲームだったりマンガだったりアニメだったり読書だったり映画だったりとなんだかインドアな物ばかりですが、こういったものが好きです。
日常的に1日の空き時間でこういった余暇活動を楽しむ場面があります。
おそらく誰しも何かしらの趣味を持っていて毎日でなくても、余暇活動を楽しむ機会があるのではないでしょうか。
余暇活動がもたらすもの
余暇活動をすることでどういった効果があるのか考えてみました。
例えば、毎日やるべきことに追われて自分の好きなことに取り組む時間が全くなければどうでしょうか?
私個人としてはストレスが溜まり心身ともに不調をきたしてしまいそうな気がします。
ちょっとしたことでも良いのですが音楽を聴きながら作業をしたり、食べたいものを食べるような息抜きがなければ息苦しさを感じてしまうものです。
こうした息抜きにより心と体がリフレッシュされることで、やるべきことに対して身が入る効果も期待されます。
つまり余暇活動の充実は人生の充実感にも繋がる重要な要素であると言えると思います。
自閉症の人たちの余暇
自閉症の人たちにとっても余暇活動は重要な役割を持っていると考えられます。
ただ自閉症の人の多くは興味があること、関心が向くことが独特でユニークである場合が多々あり、一見不可解な行動に思えることがよくあります。
しかし、そんな行動も彼らからしてみれば楽しめることだったりします。
例えば、輪ゴムを引っ張ったりブラブラさせて過ごすことが好きな方いたり、延々と同じ映像を見ることを好む方がいたりと多種多様な楽しみ方があります。
こういった自閉症の人たちにとって楽しめる、リラックスすることができる時間を確保していくことも支援の一環になります。
自閉症の人たちに起こりがちな余暇にまつわる問題
笑スリーでは主な活動として自立課題を実施する『作業』の時間、外出の機会として『散歩・ドライブ』、お食事として『昼食』といった時間があります。
ご利用者様によっては上記に加えて楽しめたりリラックスできる時間として『余暇』を実施する時間があります。
ただ、現状では笑スリーにおける『余暇』の位置づけは現時点では少し曖昧なものになっています。
というのも、ご家族様にご自宅での自由時間は何をされているのかについてお聞きすると、大体の方はご自宅ではタブレットやPCでYOUTUBEをご覧になっている、あるいは好きなDVDをご覧になっていることが多いとの返答をいただきます。
ところが笑スリーではそういった映像機器を用いた余暇活動の用意がなく、提供できる余暇には限りがあります。
その中でそれぞれの嗜好に合った余暇を提供していくためには、まずはご本人の興味関心を探っていく必要があります。
ご本人にとって興味が沸いたり関心が向くものでなければ支援者の一方的な押し付けになってしまうので、『余暇』としては適切であると言えません。
そういった状況の中、現在は『パズル』『点つなぎ』『感覚グッズ』『本・雑誌』『昇降運動』などを余暇として提供する場面がありますが、なかなかご利用者様それぞれに刺さる余暇活動を提供するには至っていません。
また、こういった現状に加えて自閉症の人たちが余暇活動を提供する際にしばしば問題が出ることがあるのも事実です。
そんな事例をいくつかかいつまんでご紹介します。
①外出が大好きなご利用者様の場合
月に数回、週末になるとご家族やヘルパーさんと外出をされるご利用者様がいらっしゃいました。
この方は食べることが大好きで、外出先では好きな物をたくさん食べることができるので、この定期的な外出をとても楽しみにしていました。
しかし、外出を楽しみにするあまり困った行動をとってしまうことがあります。
外出の日付が近くなると外出をすることで頭がいっぱいになり、何度も何度もいつ行くのか確認をしたり、興奮のあまり物を壊す行動が出てしまいます。
また、外出が中止になった際には外出できないことを受け入れられない時、何かのきっかけで外出があると勘違いして実際に行けないような状況では不安定になり不穏になってしまうこともあります。
この方の場合は外出すること自体は何も問題ないのですが、外出に関連してこういった問題が発生しています。
②曖昧な時間が苦手なご利用者様
作業能力がとても高く自立課題への集中力も高いご利用者様がいました。
この方は作業課題やパズルなどのような終わり方が明確な事柄を取り組むことはとても得意なのですが、一方で待機や過ごし方が曖昧な時間を過ごすことがとても苦手な方です。
こういった曖昧な時間をどのようにして過ごせばいいのか分からず、不安になってしまうようです。
では、なにかやることを常々隙間なく用意すればいいかと思えば、それはそれで疲労が蓄積されて不安定になってしまうことがあります。
そこでご本人が楽しめたりリラックスができて負担が少ない余暇活動を提供しようとしますが、興味を持ったり関心を向けるような対象がなかなか見つかっていません。
その結果、現状では調度良くリラックスして過ごせる余暇活動が提供できていません。
このように自閉症の人ならではの課題が発生することがしばしばあります。
どのように支援していくのが良いか?
こういった例のように興味があること関心が向くことを探るのが難しいケースがあります。
また、興味があること、関心が向くことが見つかったとしても、単純にそういった活動を提供するだけでは不安定になってしまうケースもあります。
では、どのような支援をしていくことが望ましいのか考えていきましょう。
①様々な分野を試してみる
その方が何に興味を持たれるのか関心を示されるのかは未知数です。
そのため、まずはできるだけ広い分野の余暇を試していくことが求められます。
例えばおもちゃや感覚グッズ、絵を描く、本や雑誌、音楽、運動などです。
事業所によって提供できるものには限りがあるでしょうが、できる範囲で広く試していけると良いですね。
そういった余暇を提供して『何を好まれるのか』『なにができるのか』『どんな行動をとるのか』を観察してご本人の傾向を探っていけるとヒントが得られます。
また、試していく中でご本人の発達段階を見極めていくことも重要です。
一人遊びができるのか、支援者と1対1でならできるのか、複数人で遊べるか等を確認することによって発達段階に応じた余暇活動を選定していくことができます。
②具体的に余暇活動を設定してみる
①で興味が持てる、関心が向く余暇活動を見つけることができたら次は具体的にどういった方法で余暇活動を提供していくのか考えていきます。
自閉症の人の中には好きなことがやめられない方がいたり、余暇活動の中でも見通しが立たないと不安になってしまう方がいらっしゃいます。
そういった個々の特性に合わせて必要であれば枠組みを作っていくことが求められます。
例えば『なにを』『どのくらい』『どこで』『どうやって』『どう終わるのか』などの情報を明確にしておくことで、不必要な混乱を防止できる場合があります。
繰り返しになりますが個々の特性や傾向によって、適切な枠組みは違ってくるのでそれぞれのご利用者様のことを理解した上でその方にあったやり方を提案していくことが重要です。
③余暇の提供
枠組みの準備ができたら実際に余暇活動を提供してみましょう。
提供の際には事業所であれば複数の支援員が関わることがあるかと思います。
そのような場合には支援員よって支援方法にズレが生じないように支援方法を共有するようにしておきましょう。
例えば『目的』や『具体的な支援方法』を明確に記載した計画書のようなものを作成するのも手です。
また、余暇を提供した際のご本人の様子を記録しておくと実施状況の把握ができ、ご本人にフィットした活動を提供できているのかを振り返る時に役立ちます。
④経過観察、再調整
活動を提供したら経過を追っていき、どこかのタイミングで振り返りをしてみましょう。
この時には③でお伝えしたようにご本人の実施の様子について記録を残しているので、記録を遡って確認ができると振り返りがしやすくなります。
活動提供当初はうまくいっているものも繰り返していく中で不具合が出たり、そもそもご本人に合っていない活動になってしまっている場合があります。
その場合はまたご本人の特性や傾向に基づいて活動の枠組みの調整をしていきましょう。
再調整をする際には、一度余暇活動を提供した記録があるのでこれを材料としてどのように調整すれば良いか考えてみましょう。
ざっくりとこのような順序で余暇活動の考えていけるといずれはご本人にあった活動の選定ができるのではと思います。
余暇の立ち位置
生活介護における余暇活動の立ち位置は一般的な余暇活動とは少し違いがあることは少しご理解いただけたかと思います。
ただ、人生の充実度を満たす上では欠かせない活動としては変わりはありません。
さらに補足をすると生活介護に通所されるご利用者様にとって、通所開始時は慣れない環境に順応するのに時間を要する方がほとんどです。
そのため、まずは安心できる環境作りや支援方法を整えることからはじめていきます。
そこから徐々にできる部分を増やしていったり、変更があっても受け入れることができるようになれるための支援をしていきます。
そして、余暇活動の充実を目的とした支援を始めていきます。
こういった支援をしていくことでご利用者様の安心して楽しめる生活を担保することができるのではと思います。
ご利用者様の豊かな生活を目的に、ご利用者様の状態や段階に応じて柔軟な支援ができるように今後も精進して参ります。
現場からは以上です。