個別支援について考えるの巻

皆様おはようございます、こんにちは、こんばんは。

東京都あきる野市にあります生活介護笑スリーの支援員佐藤と申します。最近、キウイばかり食べてます。

 

皆様、重度知的障害者というとどんな想像をされますか?

集団に溶け込むことが難しそう、意思の疎通が難しそうなんて印象を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

こういった印象は全く見当違いということはないですが、少し視点を変えてみるとガラッと印象が変わるんじゃないかなとも思います。

今回はそんな視点が変わるような支援の考え方についてお話してみたいと思います。

 

個別とはなんぞや?

 

私たち、社会福祉法人SHIPの生活介護では利用者様に対して「個別の支援」を大切にしています。

一言で個別といっても色んな受け取り方がありそうですよね。

そもそも「個別」という言葉はどういった意味があるのでしょうか?

辞書を引くとこんな解説がされています。

 

全体を構成しているものを切り離した一つ一つ。個々別々。「—に交渉する」「—指導」

 

…なるほど。読んで字のごとくですね。

身近で言えば「個別指導塾」なんてワードを目にする機会が多いですね。

講師が不特定多数の生徒に向けた講義をするのではなく、生徒と1対1で生徒の得意・不得意に合わせて指導をしていくスタイルです。

ここでの個別はつまり「個別」=「1対1」といった感じです。

1対1で対応することで、よりその生徒にに合った教え方ができる利点があります。

私たちが考える「個別の支援」と重なる部分もあれば異なる部分もあります。

 

私たちが考える個別の支援

 

単純に「個別の支援」という言葉を聞くとなんとなく1対1での対応を想像をしてしまうかなと思います。

そもそも重度知的障害者の利用者様の中には集団行動や大人数がいる空間そのものが苦手な方が多くいらっしゃいます。

「不安になってしまう」
「他害が出てしまう」
「周りに合わせることが苦手」

これらの行動・様子から重度知的障害者の対応については、特に1対1の対応を想像しやすいかもしれません。

確かに1対1の対応で不安定な状態や問題とされる行動を予防できることはありますよね。

ただ、予防できたとしても原因を解決できているわけではないので、もしかしたらずっと1対1の対応が必要な状態が続くかもしれませんし、なにかの拍子で不安・不穏状態が出現するリスクを抱えたまま支援を続けていくことになります。

そしてなにより、1対1の対応をすることで置かれている状況に利用者様が順応できる可能性の芽を摘んでしまっている可能性もあります。

集団で過ごすことが苦手な利用者様でも、その人に合った環境を整えることができれば、落ち着いて集団の中で過ごすことができるようになるケースもあります。

その人にとっての適切な環境を作り出せれば、利用者様は過ごしやすくなり、生活の幅が広がります。

そんな思いから私たちは利用者様への対応を考える時に、ご利用者それぞれに合った環境を整えていくことを考えていきます。

このそれぞれに合った環境整備こそが私たちが考える個別の支援です。

注意としてはやみくもに集団への順応に固執するわけではなく、それぞれに合った環境の中に「1対1の支援」という選択肢もあります。

私たち支援者の押し付けではなく、利用者様を中心に考えることが大切だと考えます。

 

How To 環境を整える

1.利用者様を知る

利用者様に合った環境を整えていくためには、まずその利用者様について知らないと始まりません。

初めての場所に行く時には、行先への道順がわからなければ目的地に辿り着けないので、事前に調べてから出発しますよね。

人によっては実際に下見に行くかもしれません。

これと一緒で利用者様のことをわからないまま見切り発車で出発しては、どこに行ってしまうのかはわかりません。

目的を持ち、目的のためには何をするべきか。

何をすべきかわかったら、すべきことのためになにが必要なのか。

こんな感じで順序立てて考え、準備をしていけると良いですね。

さて、そんなこんなでまずは利用者様のことを知ることからはじめます。

とは言え利用者様の中には言葉やジェスチャー等で「なにをどう見て」「なにを感じて」「なにを思い」「なにを考えているのか」を伝えることが困難な方が多くいらっしゃるので、簡単にご利用者を知ることはできません。

そんな利用者様を知るために私たちは

 

①利用者様・家族様への要望聞き取り
②家族様に家庭での様子や生活歴の聞き取り
③利用者様の能力や傾向を計る検査

 

を実施していきます。

利用者様・家族様からのご要望をお聞きした上で、語彙発達検査やTTAP等の専門的な検査を行い、利用者様の現状を把握することができるように努めます。

初めて支援をしていく利用者様にはこういった方法で情報を集めていきますが、これだけでは利用者様のことを知るにはまだまだ情報が不足しています。

事業所利用を開始してからは、活動を通してご利用者をより深く知ることができるように行動を観察していきます。

一見して行動の理由がわからないことでも、粘り強く行動の背景や経緯をつぶさに観察して理由を考えていきます。

 

2.具体的な環境設定方法の検討

得た情報から

どんな伝え方だと理解しやすいのか
どんな環境だと落ち着いて過ごすことができるのか

という視点を軸に環境設定方法を検討していきます。

 

例えば…


「気持ちの切り替えが苦手」

↓↓

「活動の内容毎に場所を変える」(作業用の場所、余暇用の場所、休憩用の場所、食事の場所等で分ける)


「同じ場所に色々なものがあると混乱してしまう」

↓↓

「その時使うもの以外はしまっておく」「物の置き場所はいつも同じにする」


「言葉で伝えるよりもイラストで伝えた方がわかりやすい」

↓↓

「場面に合わせたイラストカードを用意してコミュニケーションをとる」


 

などなど…。

こんな風に利用者様の特徴に合わせて環境設定を考えていきます。

 

このようにして環境設定をしていき、利用者様の様子に合わせて都度調整をしていきます。

 

最後に

このようにして私たちSHIPの生活介護ではそれぞれに合った環境を整え続ける支援をしています。

そして最終的な目標は利用者様それぞれに合った個別の支援を見つけ出すことにあります。

利用者様を知り、個別の支援を提供していくことが、利用者様のその人らしい人生に繋がると良いなと思っています。

その人の能力、才能を引き出すお手伝いができるのは素晴らしい事です。

なかなか一朝一夕でできるものではないですし、もしかしたらいつまでも実現できないこともあるかもしれませんが、私個人としては簡単にはできないからこその深み・面白みもあるのかなと思っています。

 

それでは現場からは以上です。