避難訓練〜自閉症の方にとっての「いつもと違う」出来事〜
季節の移り変わりを実感する今日この頃です。笑スリーでは、徐々に利用者様も増え、にぎやかな毎日を過ごしております。

はじめに
笑スリーには、重度知的障がい・自閉症の方が多く通所されています。
そんな皆さんにとって「避難訓練」は、どんな行事に見えるのでしょうか。自閉症の方には、独自のルーティンを大切にする傾向があり、「いつもと違う出来事」は不安や混乱につながる場合があります。
さらに、感覚過敏のある方にとっては、避難の号令や環境音が強い刺激になってしまうこともあります。
私たちにとっては“ただの訓練”。
でも、利用者様にとっては「予期しない異常事態」に感じることもあるかもしれません。だからこそ、事前準備や配慮はとても重要です。
今回は、笑スリーが行っている避難訓練の準備と当日の様子を少しご紹介します。
避難訓練の準備
①計画づくり
今回の避難訓練は火災を想定しています。
前回5月の参加人数は3名でしたが、今回は利用者様9名+体験利用者1名の計10名。職員数も増えているため、改めて「どうすれば安全に、落ち着いて避難できるか」を検討しました。
また、どこまで実際を再現するかも大事なポイントです。
前職(放課後等デイサービス)では、リアルな設定で行う避難訓練をしてきましたが、“リアルに近い訓練”だからこそ、不安やパニックに繋がる場面も見えました。
「訓練がトラウマになってしまうと本当の火災で動けなくなるかもしれない…」
そんな懸念もあり、今回は話し合いの末、以下の方針に決定。
•避難訓練等のスケジュールツールはあえて使わない
•靴を履く、こだわりや、室内残留など、事前に排除できるものはカットする
•ただし、難しい場合は無理をせず、トラウマ回避を優先
•必要に応じて「避難訓練です」と伝える
利用者様一人ひとりの特性を尊重しつつ、安心して取り組める形を選びました。
②職員配置
「誰が・どこで・どう動くか」
これが曖昧だと、訓練中に利用者様を不安にさせてしまう可能性があります。そこで、事前に細かく職員配置を決め、各作業室の担当を明確にしました。
名前は伏せますが、実際に使用している配置表が以下になります。
半年に一度の訓練だからこそ、職員も利用者様も“いつもと違う流れ”を理解しておくことが大切です。
避難訓練 -当日-
それでは、実際の訓練の様子です。
今回は「厨房からの火災発生。初期消火不能。」を仮定して訓練を行いました。
担当職員の「厨房から火事です!」の声掛けで訓練スタート!
職員がすぐに火元へ向かい、消火器で初期消火を試みます。
初期消火不能という設定のため、
「初期消火不能!火事です、避難してください!」の合図で利用者様の避難開始です。

笑スリーでは、3つの作業室から順番に避難します。

職員の誘導により、どの部屋の利用者様も落ち着いて移動されていました。

大きな不安も見られず、とてもスムーズ。

最終的に、全員が無事に避難完了!
ケガや混乱もなく、無事に終えることができました。

訓練を終えて
訓練を終えて見えたこと
今回の避難訓練を通して、いくつか課題も見えました。
•全体を指揮する「司令塔」がいた方が良い
•各作業室とは別に、全体誘導を担当する職員を設ける必要
•外に出る際のこだわりへのアプローチの再検討
•“訓練だからできる”行動と“本番でもできる”行動の違いの把握
などなど…
本当の火災を想定した訓練はとても難しいですが、
「最悪の場合をどう乗り切るか」を議論することも必要だと思いました。
もちろん、訓練の成果を発揮する場面が来ないことが一番です。
けれど、備えあれば憂いなし!
今回の参加者は10名でしたが、来年度は20名になる予定です。
これからも半年に一度、「もしも」に備えて、丁寧に訓練を続けていきます。


