ASD・重度知的障害の方との信頼関係を築くために必要なこと

こんにちは。
東京都あきる野市にあります、社会福祉法人SHIP 生活介護 笑スリーの久保田です。

まだ寒さと乾燥の厳しい日が続いていますね。
インフルエンザやコロナ、ノロウイルスなどの感染症には、引き続き気を付けていきましょう。

さて、今回のテーマは
「ASD・重度知的障害の方との信頼関係を築くために必要なこと」です。

福祉の業界では
「ご利用者と信頼関係を作るには愛情だよ」
と教えられることが多くあります。

私も以前勤めていた入所施設で、新人の頃に先輩から散々そう教えられてきました。

支援に愛情が必要であること自体は、決して間違いではありません。
しかし、ASD・重度知的障害のある方に対する「愛情」は、一般的にイメージされる愛情とは、少し性質が異なるものとして捉える必要があると感じています。

それはなぜなのか。
今回はその点についてお話ししたいと思います。


「愛情」から陥りやすい支援員の対応

もし何も考えずに、「愛情」で信頼関係を築こうとした場合、
どのような対応に陥りやすいでしょうか。

① たくさん関われば信頼されると考えてしまう

とにかく関わりの量を増やしていけば、そのうち信頼してもらえるはずだ、と思い込んでしまうことがあります。
しかしそれが、ご本人にとっては不快な刺激の連続になっている可能性もあります。

② 「この人は分かってくれるはず」と期待してしまう

根拠が乏しいまま、愛情という名の下に勝手な期待を抱いてしまうこともあります。
その期待が満たされなかったとき、支援員側が失望したり、憤りを感じてしまうこともあるかもしれません。

③ 優しさのつもりでルールを崩してしまう

ご本人が安心して過ごせるように整えられたルールや環境があっても、
「今日は特別」「たまにはいいだろう」と、支援員自身の物差しで崩してしまうことがあります。
これは結果的に、不安や混乱を増やすことにつながりかねません。

④ 感情で関係を作ろうとする

好かれようとして安易に距離を縮めようとすることもあります。
しかしそれは、ご本人にとって予測不能で不快な刺激になる場合があります。

一見すると「愛情を込めた美しい対応」に見えるかもしれません。
しかしご利用者にとっては、「愛情」という名の大義名分のもとで、混乱や不安を引き起こされている状態になってしまうこともあります。

これでは、信頼関係を築くことは難しいですよね。

では、ご利用者にとっての「信頼」とは、一体どのようなものなのでしょうか。


信頼関係とは「感情」ではなく「体験の蓄積」

ASD・重度知的障害の方にとっての信頼関係は、
「この人は好き」「優しい人」といった感情的な理解よりも、

  • この人といると何が起きるか分かる

  • 変なことをされない

  • 予想外のことが起きにくい

といった、安心できる体験の積み重ねによって形成される傾向があります。

つまり、
ご利用者にとっての信頼とは
「あなたとの関わりは安全で安心だと学習した結果」
と言えるのではないでしょうか。

では、なぜそのような捉え方になるのでしょう。


特性から考える信頼関係のポイント

① 一貫した対応に安心する

ASD・重度知的障害のある方の多くは、

  • 人が変わっても対応が大きく変わらない

  • 昨日と今日でルールが変わらない

  • 支援員の忙しさや機嫌で態度が変わらない

といった、一貫性のある対応に強い安心感を覚えます。

② 予測可能な関わり方を好む

何かをする前に必ず知らせてもらえること、
次に起こることが分かりやすいこと、
終わりがはっきりしていること。

このような見通しの立つ関わり方が、不安を大きく減らします。

③ 小さな約束を守る

提示されたルールを支援側がきちんと守ること。
できもしない約束をしないこと。
言葉と行動が常に一致していること。

これらが積み重なることで、「この人は信用できる」という感覚が育っていきます。


愛情の位置づけを間違えないために

支援員がこれらのポイントを徹底して関わることで、
ご利用者の中に少しずつ安全・安心が芽生え、信頼が築かれていきます。

そういう意味で、
愛情を持ってこれらの対応を真剣に行うことは、とても大切です。

ただし、
「愛情一心で行う対応」と
「構造と一貫性を持った関わりを、愛情をもって続けること」
は、しっかり区別して考える必要があります。


さて、いかがでしたでしょうか。

障害福祉で働く皆さまがご利用者の皆さまとの信頼関係を築くにあたり、今回のお話がヒントのひとつとなれば幸いです。