自閉症支援のステップ

みなさま、こんにちは。

あきる野市にあります生活介護笑スリーの佐藤です。

今回は自閉症の支援について学ぶ研修に参加した際、個人的に参考になった「自閉症支援のステップ」についてお伝えいたします。

 

SHIPの自閉症支援とは?

弊社の生活介護では自閉症の方への支援に力を入れており、TEACCHプログラム®を参考にした構造化支援を行っています。

TEACCHプログラムとは

TEACCHプログラムは、自閉スペクトラム症の方やそのご家族の生活を、生涯にわたって支援していこうという包括的なプログラムです。 アメリカのノースカロライナ州立大学で基盤ができ、現在、世界各国で実践されています。

 

構造化とは

生活や学習のさまざまな場面で、その意味を理解し、自分に何が期待されているのかをわかりやすく伝えたり設定したりするための方法です。特に「自閉症教育」の中では、従来から重視されてきた教育方法です。

構造化についてはこちらの記事で紹介していますので良ければご覧ください↓

いろんなところに構造化♪

 

  • 自閉症の人たちが理解しやすいように、目で見てわかる形で伝える。
  • 自閉症の人たちが安心・安定できる環境整備を行う。
  • これらの支援を個々の特性に合わせて行う。

こういった支援を通してご利用者様の可能性を引き出すことができるよう取り組みを行っています。

 

 

支援のステップ1,2,3

ご利用者様それぞれ個性があり、得手不得手が異なるので効果的な支援方法は個別に考案していきます。

ただ、大枠として支援のステップは3つに分けることができます。

 


ステップその①『見通しを持てるように』

利用開始時の多くのご利用者様は『なにをするのか』『これからなにがあるのか』などの見通しが立たずに不安な状態です。

なので、まずは見通しを持って安心できるようになるための支援から始めるケースが多いです。

ご利用者様の多くは視覚優位で目から見た情報を取ることに長けている一方、視覚支援を受けることに慣れていない方々がほとんどです。

そういった場合、何かを見て自分で判断するというよりも、支援者や周囲の人からの指示により行動を判断されています。

こういった方たちはご本人の能力を発揮する余地がまだまだあり、発展途上であるケースがとても多いんですね。

本来持っている『視覚的に情報を受け取り処理する能力』を伸ばして見通しをもってもらえるように支援をしていきます。

目で情報を得て理解していただくような学習を積んでいき、目から得た情報で基にして見通しを持てるようになっていただくことが第1目標となります。

主に見通しを持つ際に有効なツールは『スケジュール』です。

このように1日の予定を目で見える形でいつでも確認できるようにすることで『これからなにが起きるのか』をお伝えします。

こういったツールへの理解が深まることで見通しをもてるようになります。

 

さて、その後の発展はどのような考え方でどういった支援が求められてくるのか。

ここからが今回の研修でとても勉強になった部分のお話になります。

 


ステップその②『自立の幅を増やす』

視覚情報を理解する学習が積まれてきて、スケジュールにより見通しを持ち安定して活動に参加できるようになりました。

次のステップとしては自立の幅を増やしていきます。

支援の現場でよくあり勝ちな現象として、特定のご利用者様に対して慣れている職員じゃないと対応ができないといったことがあります。

自立の幅を増やすことができると、人に依った支援ではなくご利用者様自身でツールを使って行動することができるようになり、こういった人由来の支援の問題は解決できることがあります。

 

ステップ①では自分の目で見て判断する練習をしてスケジュールを使えるようになりました。

この目で見て判断するという能力を活かして、他の場面でも自分で判断して行動できるように練習をしていきます。

具体的な方法はいろいろありますが『ワークシステムの活用』は代表的な例になります。

ワークシステムとは

『いつ』『なにを』『どうやって』『どのくらいやるのか』『終わりがどこなのか』『終わったら次はなにをするのか』を目で見て分かる形で示すものです。自閉症の人が苦手な段取りや情報の整理、見通しの持ちにくさをフォローするために役に立ちます。

ワークシステムについては笑プラスに紹介記事がありますので良ければご覧ください↓

【色々あります】自立作業のワークシステム

 

生活介護ではワークシステムを主に自立課題を実施する際に活用します。

課題をあとどのくらいやるのか、どうやってやるのかがワークシステムで示されることで支援者の指示がなくても自分で判断して行動できるようになります。

こういった目で見て分かる仕組みを活用しながら自立度を高めていきます。

 


ステップその③『柔軟性を身に付ける、般化をしていく』

ステップ②までの支援で自立の幅が増加し、支援者の介入がなくても活動に参加できる場面が増えてきました。

ここからの更なるステップとして『柔軟性を身に付けてもらう』という支援を行っていきます。

自閉症の人たちは変更を受け入れることが苦手な方が多く、イベント事やイレギュラーな事態に上手く対応できることができない場合があります。

イベント事が苦手な理由について解説した記事がありますので良ければご覧ください↓

自閉症への理解

 

ただ、日常生活を過ごす上で急な変更や思った通りにいかないことは数多く存在しています。

こういった状況に遭遇したときに上手く受け入れられるように、また新しいことを受け入れられるように『柔軟性』を養っていきます。

柔軟性を身に付けてもらうためには、普段使っているスケジュールに変更を加える等して『今日はいつもと違うんだ』という経験を積んでいってもらいます。

変更を加える際にはご利用者様が理解できる形で変更があるということを伝える必要があります。

 

また、『般化』ができるようになることも支援していきます。

般化とは

学んだスキルを別の場所でも使える能力のことです。

また、学んだスキルの一部を取り出して、異なる手順で応用する能力のことです。

自閉症の人は『場所と行動』や『人と行動』等と1対1で行動を結び付けやすい傾向があります。

『ここではこうする』『この人とはこうする』といった具合です。

般化ができるようになることで1対1で行動を結び付けるのではなく『場所が違っても同じ行動』を取れるようになります。

般化を身に付けてもらうためには、同じような活動を違う場所でも実施する経験を積んでもらいます。

例えば室内活動で使用しているツールを室外活動でも使用してみたり、生活介護で実施していることをご自宅でもGHでも実施してみたり等の方法があります。

こういった支援を通して場所が変わっても同じようにツールを使いこなせるようになる練習をしていきます。

 

このように柔軟性と般化といった能力を身に付けることで、これまで得たスキルをいろいろな場所で発揮することができるようになります。

そうすると、生活の幅が広がりご利用者様の安定した暮らしに結び付けることができます。

こういったステップを踏んでご利用者様の能力を引き出す、生活の幅を広げる支援を継続していきます。

 

自己効力感を伸ばす

ご利用者様の能力を引き出し、生活の幅を広げる支援をすることで得られる利点はどこにあるでしょうか。

人生に何を望むのかは人ぞれぞれであり、こういった支援が必ずしもご利用者様にとっての幸福に結びつくかどうかは正直わからないところがあります。

ただ、一つ言えることはご利用者様の能力を発揮できる支援をしていくことで、『ご利用者様自身が自分で決めて自分で行動する』ための『自己効力感』(自分ならできるという実感)を持つことができます。

つまり、なにをしたいのか、なにを好むのかはご利用者様それぞれで異なりますが、何かを望んだときにそれを叶えるためのベースとなる能力を養う支援をすることはできます。

どこまでの能力を身に付けられるかはご利用者様それぞれで異なる部分ですが、そのご利用者様の能力を最大限引き出すことができる支援をしていけるように努めてまいります。

現場からは以上です。