自閉症のご利用者様の意外な能力
皆様、こんにちは。
あきる野市にあります生活介護笑スリーの佐藤です。
11月も残り僅か。
寒さも一段と厳しくなってきましたが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?
私は冬に向けてなぜかどうしてもバイクがほしくなり、妻に交渉をしている今日この頃です。
今回はつい先日、ご利用者様に対して行ったアセスメントにまつわる少し面白い話があったのでご紹介しようと思います。
ご利用者様紹介
今回登場するご利用者様A様はこれまで主に口頭でやり取りをする支援を受けていた経験を持たれている方です。
そのため、支援者の言葉がけを合図にして行動を開始するといった傾向を持っています。
言葉でのやり取りで一見なにも問題ないように見えますが、よくよく見ていくと言葉への理解はあまりないことがわかってきました。
というのも、身の回りにある聞き覚えのある言葉、例えば『ご飯』『トイレ』『帰る』等は理解していますが、抽象的な言葉(動物や生き物といった具体性に欠ける言葉)や普段耳にしない言葉については全く理解をしていませんでした。
また、単語なら伝わることも『○○を○○します』などの連続した言葉は理解がしにくいこともわかりました。
一方、とってほしい行動を支援員が目の前でやって見せたり、ジェスチャーで伝えると理解がしやすい傾向があることがわかってきました。
このことから、目から得る情報であるとわかりやすいといったことが言えると思います。
しかし、この方はこれまで主に言葉がけの支援の経験から、目から情報を拾うことに慣れていません。
つまり能力はあるけれど活かしきれていない状態です。
自立課題でいざ練習
そういったA様には目から情報を得る練習を積んでいただき、自分で理解して自発的に行動できるようになることが支援の大目標になります。
とはいってもいきなり多くを求めてはご本人が混乱してしまいます。
まずは自立課題を提供してA様がどういった物の捉え方をするのかを確認していくと共に、目から情報を得て行動に移す練習をしていただきます。
- 自立課題とは
一人で取り組み、一人で完成できるように工夫された課題のことです。
自立課題のつくりとしては目で見て取り組み方がわかるように配置や色使いに工夫がされています。
具体的には、机の上で行い、始めから終わりまで自分一人で取り組むことができるよう、設定された活動を指します。
自立課題を行うことで、物事の「始まり」と「終わり」を学び、次の活動への移行のタイミングを学ぶきっかけ作りとなります。
下記ブログでも紹介していますので詳しく知りたい方はご覧ください。
実際にA様に自立課題を提供したところ、見本を見るように促せば着目して取り組むことができるものの、促しがなければ着目が薄いことがわかってきました。
見やすい見本の設定方法
A様が自立課題に取り組む様子を観察していくと実物そのものであったり実物と等倍の見本であれば認識しやすい傾向があることが掴めてきました。
そこで更にどういった方法で提示された見本であると理解がしやすいのか調べていくことにしました。
試しにこういった自立課題を出して調査していくことにしました。
いわゆるアセスメントというやつですね。
内容は等倍の見本写真と容器を横に置いて見本通りにボールを入れてもらうといったものです。
更に課題に繰り返し取り組む中で色の並びを覚えてしまうことがあるかもしれないので、見本のバリエーションをいくつか作成しました。
ちなみにこの自立課題を出すにあたって、最初は支援員が見本を強調しないとA様はできないかもなーといった見立てをたてていました。
なので、『お一人で最初から取り組める』ことを目的とせずに『見本を見る取り組み方法を観察する』『体験を通して取り組み方を学んでいただく』ことを目的として提供してみました。
しかし、この自立課題を提供してみたところ予想だにせず一発目から支援員の介入なしで実施することができてしまいました。
どうやら支援員が思っていた以上にA様の能力が高かったようです。
これについては、日々自立課題に取り組む中でA様の学習が積み重なっていたこと、こういった学習で得た能力を初めて取り組む自立課題でも活かすことができたことが要因と考えられます。
支援者とご利用者様のギャップ
支援員が思っていたA様の能力とA様が実際に持っている能力にギャップがあったことが個人的には面白かったと感じました。
今回の場合は想定していたよりもA様の能力があったことに驚きと共に嬉しくも感じました。
思っていたよりも出来ることがある、反対に思っていたよりもできないこともあります。
こんなことは実は割とある話なのかなと思います。
毎日支援をしながらご利用者様のことを見ていると、ご利用者様への理解が深まりついついこの方はこのくらいならできるかな、これはちょっと難しいかなと当たりを付ける癖がつきます。
的外れな支援を選択してしまうことを減らす効果もあるでしょうから必ずしも悪い事ではないのですが、過信しすぎるとご利用者様本来の能力や傾向を見誤ってしまうことにも繋がることもあります。
当たり前のことであるようですが今回の出来事を教訓とし、フラットな目でご利用者様を支援していけるように気を引き締めていきたいと思います。
現場からは以上です。