「ちょっと待って」が難しいのはなぜ? ー重度知的障害・ASDのある方への理解-
こんにちは。東京都あきる野市にあります、社会福祉法人SHIP 生活介護 笑スリーの久保田です。
もうすぐ夏本番の時季に入りますね。
近年の夏の猛暑は本当に大変ですが、ついに40℃超えの日に「酷暑日」なんて名前も付いてしまいました。
みなさん、今年の夏も熱中症には十分気を付けて下さいね。
さて、今回のテーマは「ちょっと待って」の難しさについてです。
福祉の現場にいると
「ちょっと待ってね」
「まだだよ」
「もう少し頑張ろう」
といった言葉をかける場面がよくあります。
しかし、重度知的障害やASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、こうした言葉がなかなか理解できず、強い不安や混乱につながることがあります。
今回はその理由について、できるだけ分かりやすくお話したいと思います。
「待って」は実はとても難しい言葉
私たちは「5分待って」と言われると
- 今はできない
- 5分後にはできる
- それまで別のことをしていよう
ということを自然に理解できます。
しかし、重度知的障害のある方の中には、
「今できない」
ということは分かっても、
「いつできるのか」
を理解することが難しい場合があります。
つまり
「待って」
が本人にとっては
「いつ終わるか分からない状態」
になってしまうことがあります。
ゴールの見えないマラソンを走るような感覚に近いかもしれません。
「まだ」が苦手な理由
ASDの特性として、見通しを持つことが安心につながる方が多くいます。
反対に
- いつ終わるのか
- 次に何が起こるのか
- いつ好きな活動ができるのか
が分からない状況は大きなストレスになります。
例えば
「お昼ご飯まだ?」
と聞いた時に、
「まだだよ」
だけ返されたとします。
私たちは何となく待てますが、本人からすると
「じゃあいつなの?」
が分からないままです。
終わりが見えない不安が積み重なり、興奮や大声、自傷、他害などの行動につながることもあります。
「頑張って」も分かりにくい
支援者は励ますつもりで
「頑張って!」
と言うことがあります。
しかし実は、
「頑張る」
という言葉は非常に抽象的です。
- 何を
- どのくらい
- いつまで
頑張ればいいのかが分かりません。
例えば、
「あと3個入れたら終わりだよ」
であれば具体的です。
しかし
「頑張って」
だけだと、本人は何を求められているのか理解しづらい場合があります。
目の前の「今」がとても大きい
重度知的障害やASDのある方の中には、
「今見えているもの」
「今やりたいこと」
に意識が向きやすい方がいます。
例えば
- 散歩に行きたい
- お菓子を食べたい
- 好きな場所へ行きたい
と思った時に、頭の中ではその要求が非常に大きくなります。
そのため
「後でね」
と言われても、今やりたい気持ちを抑えることが難しいことがあります。
これはわがままではなく、情報の処理の仕方や特性によるものです。

支援で大切なこと
こうした方への支援では、
「待って」
よりも
「○○したら行こう」
「時計の針がここになったら行こう」
「この作業が終わったら休憩だよ」
など、見通しを具体的に伝えることが大切です。

また
- 写真
- 絵カード
- スケジュール
- タイマー
など、目で見て分かる情報を活用すると理解しやすくなることがあります。

まとめ
重度知的障害やASD、強度行動障害のある方が
「待って」
「まだ」
「頑張って」
といった言葉を苦手とするのは、決してわがままだからではありません。
- 時間の概念が分かりにくい
- 見通しが持ちにくい
- 抽象的な言葉の理解が難しい
- 今の要求や興味が強く意識に上りやすい
といった特性が関係しています。
私たち支援者が「なぜできないのか」と考えるのではなく、「どうすれば分かりやすく伝わるか」を考えることで、本人の不安や混乱は大きく減らすことができます。
支援とは、本人に合わせて伝え方を工夫すること。
その積み重ねが、安心して過ごせる環境づくりにつながっていくのではないでしょうか。
以上、ちょっと待っての難しさでした。
ご覧いただきありがとうございました。



